当方BLOGにコメントをいただいていましたが、システム上の関係でコメントを確認できておらず回答できておりませんでした。この場を借りてお詫びと共に、今更ではありますが回答させていただきます。
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セブン様からのコメント(2015/8/24)
はじめまして。地元の工務店に依頼し、新築中の者です。防湿シートで悩みこのブログに辿り着きました。色んな資料を読み、この本も読ませて頂きましたが答えが出ないでいます。
わが家は、中国地方でほとんど雪は降らない地域です。
外壁通気工法で、しっくい、モルタル、モルタル下地ラス板、通気層、とうしつ防湿シート、パーフェクトバリア断熱、石膏ボード、しっくい、となります。防湿的役目を果たすものがない場合でも防湿シートは使用しない方がよいのでしょうか?屋根断熱、床断熱にもパーフェクトバリアを使用し、ラス板、杉足場板、 漆喰、石膏ボード、屋根ガルバとできるだけ自然素材で建てています。
勝手に相談を持ちかけてしまいましたが、お時間に余裕がありましたらご意見お聞かせ願えないでしょうか?宜しくお願いします。
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断熱オヤジからの回答
防湿シートで、お悩みのようですね。「あげあしとり」のつもりはありませんが「とうしつ防湿シート」は、透湿防水シートの事ですね。
先ず最初に、透湿防水シートについて説明をします。1980年頃、米国のデュポン社から我が国に輸入されるようになりました。水は通さず、水蒸気は通す事の出来るポリエチレン不織布です。不織布の空隙が水分子より小さく、水蒸気より大きいので透湿性と防水性の両方を持ち備えています。
洋服では、スキーウエアーや登山用ウエアーで、既に我々の生活に利用されているゴアテックスがあります。冬期間の運動時に汗を沢山かいた時に外部に汗の湿気を放出して汗干えを防ぎ、外部からの雨水の浸入を防ぐ機能をもっている。
このゴアテックスの機能を木造住宅に取り入れたのがタイベック(透湿防水シート)です。タイベックが登場する以前は、ほとんどの上棟後の木造住宅は、外壁が一旦真っ黒になるのが一般的でした。これは、アスファルト系の防水シートが使われていたからです。近頃は、透湿防水シートが白いので上棟後は外壁が白くなってきました。
透湿防水シートとあわせて外壁通気工法が使われるようになり、冬期間、室内で発生した水蒸気が構造躯体に浸入し壁体内結露を発生させないように、室内側に防湿シート(ベーパーバリアー:水蒸気防御)を張るようになりました。これは、繊維系断熱材(ロックウールやグラスウール)のように比較的、透湿抵抗が小さいものを使用すると、壁体内に結露する恐れが出てくるので、仕様規定として防湿シートを張ることによって、防露措置がなされたと判断されるようになりました。
つまり、ロックウールやグラスウールのような繊維系断熱材の拡散移動(空気の移流による、空気と一緒に移動する水蒸気とは別)による透湿率は170 (ng/m・s・Pa)で、比較的水蒸気を良く通します。
硬質のウレタンフォームは1.0(ng/ m・s・Pa)で、あまり水蒸気を通しません。
中間にあるのが、現場発泡の軟質ウレタンフォームで、31(ng/ m・s・Pa)です。
ちなみに、日本の伝統的な木造住宅に用いられている建築材料では、土壁が20.7(ng/ m・s・Pa)、しっくいが52.1(ng/ m・s・Pa)です。
現在よく使われている、内装下地材のせっこうボードは39.7(ng/ m・s・Pa)です。
防湿シートで水蒸気の移動を止めるには、シートのジョイントやテープでの部分で施工面での難易度が高く、逆に一旦、水蒸気が入ると逆に戻りにくくなったり、夏期の逆転結露発生リスク等の欠点もあります。
これからは、仕様規定で壁の中に水蒸気を浸入させない目的で防湿シートを施工するのでなく、その住宅の建設される地域の温度条件や室内の温度湿度条件から、外壁の場合なら、通気工法で構造用面材、断熱材や内装材の層構成を設定して、熱伝導率と透湿率から躯体内で結露しないことを定常計算や非定常計算で確認しながら、外壁全体を設計することになってきています。
室内側に防湿シートを張って水蒸気を止める時代から、壁の中にどの位の水蒸気を出し入れするかといった、呼吸する層構成を設計する時代となってきました。
結論としては、水蒸気の移動を防湿シートで止めるのはもはや時代遅れといえましょう。