今回は、透湿と結露の話。
衣服に透湿性を持たせてあるのは汗を蒸発させるため。
オムツカバーも余分な湿気を逃がすため。
では住宅では室内側に防湿シートをなぜ使うのだろうか。
結露は「水蒸気がある温度条件で液体の水になる」事であるが、
水蒸気の移動は大きく分けて二つある。
一つは空気により移動するもの。
もう一つは水蒸気圧の差で、平衡になるまで移動するもの。
後者は専門的には「拡散現象」という。
空気により移動する量が拡散による移動量よりもはるかに大きく、
ざっと100倍であり、
移動スピードも速いのでもっと大量の水蒸気が動く事になる。
結露の主な原因は
この空気で移動する水蒸気なのだが、
多くの人達は拡散で動く水蒸気を基にした考え方をする。
したがって、ベイパーバリヤー(防湿層)ありきとなる。
「湿り空気線図」は結露を判定するには便利だが、
これはあくまで密室での水蒸気の挙動であり、
オープンスペースにおいては、露点は現れない。
ガラス面など表面に起きる結露は空気線図の法則の極限的な一瞬の現象である。
湿り空気線図の法則が一瞬成り立つのは
温かい(あるいは冷たい)空気が
冷たい(あるいは温かい)面材(短板ガラス、金属あるいは合板の面材)
にぶつかった時である。
繊維系の断熱材では
空気が自由に通過するのでこの現象が起きるのである。
歴史的には繊維系の断熱材の設置が、
壁内の結露発生の大きな要因となったため、
対策として、壁内に水蒸気を侵入させないように
防湿シートを設置することになった。
室内側に防湿シートを設置しておきながら、
外には透湿シートがあり、
外からの湿気は自由気ままに壁内に侵入する。
室内側のシートにぶつかりそこで結露が発生する。
止めないで室内側に透過させればよいのだが、
ベイパーバリヤーが法的な条件と思っている人がまだ多い。