建築物理学 断熱を考えるには物理を学ぶ必要がある



断熱を勉強してみると熱の事だけを検証しても片手間で、

空気の事、水蒸気の事も同時に考えねばならず、

大げさに言えば物理学を勉強する必要がある。

と海外の友人に言われた。

いまさら物理学は勘弁してくれと言いたいところだが、

「熱は温度の高い場所から低い場所に移動していく。

風圧の高いところから低いところへ、

水蒸気圧の高いところから低いところへと

空気も水蒸気も移動する。

しかし平衡状態になれば移動はとまる」

ということを覚えておけばよいとの事。

日本では建築工学という言葉は頻繁に聞くが、

建築科学あるいは建築物理学という表現が

欧米で使われているのは上記の温熱の挙動を

知っておくべきということである。

水蒸気の動きは「水蒸気圧で動く」ものと

「空気とともに移動する」ものが主な動きであり、

驚いたのは水蒸気で動く量の単位が

ナノグラム(10億分の1グラム)であり、

こんな小さい単位での結露議論は実際には

意味があるのかどうか疑問に思った。

北米の人に聞いてみたら、結露はほとんど

「空気漏れで多量に移動する水蒸気」

との回答であった。

つまり漏気や気密が取れていない住宅など

隙間だらけの住宅のこと。

それなら日本にはたくさんある。

漏れることは外からも空気や水蒸気が入る事にもなる。

節約や我慢をしながらそれでも耐えられないときは

少し暖房を行い、冷房もしてきた。

実は随分無駄をしていたことになる。

だって、快適温度にするにはエアコンを高めに設定

あるいは低めに設定して相当な負荷をかけていたわけで、

実に勿体ない。

これではエアコンの損傷も早い。

無断熱の床の温度は殆ど外気温に近く、

暖房でガスヒーターをおいてある家は

スイッチを入れると床面の温度を表示してくれるが、

いまどきの関東では4~6℃程度ではないか。

室温も同じである。

こんな状態で20℃まで室温をあげようとしても無理。

部屋を閉め切って(実際に至るところに隙間あり

完全締め切りは無理)精々15℃程度までしか

上昇しないだろう(部屋の大きさにもよるが)。

風の強い時はなかなか上がらない。

みんな当たり前と思っているのだろうか?

日本のこの低温生活はなんだか恥ずかしい気がしてきた。

気密や断熱の事が、

もっと日常茶飯事の話題にならないのかと思う。